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2023.09.12

第29回FD Café「仮想現実空間を活用した学びの革新化と教育DX推進の試み」を開催しました (8/29)

第29回FD Café「仮想現実空間を活用した学びの革新化と教育DX推進の試み」をE棟3F R1教室にて開催いたしました。今回のFD Caféは、生命環境化学科赤木紀之教授と情報システム工学科田村かおり准教授から、仮想現実空間を導入した授業実践について話題提供を頂き、参加者で意見交換を行い、発表の最後には参加者が実際に仮想空間のアバターを操作する機会を設けました。対面とオンラインで開催し、教員20名と職員33名の計53名が参加しました。

 

初めに、赤木教授から授業の中に仮想現実空間を活用した経緯が紹介されました。アメリカで研究をしていた際にMicrosoft Project Users Forum(MPUF)の枷場博文氏らが開発したXRCC(Cross Reality Conference Cloud)システムを利用し、Akagi Lab空間を構築したこと、Labの参加者はそれぞれが自分でデザインしたアバターで空間に入り、歩き回ったり、空中を飛行してみたり、自由な動きで視点も変化させながら交流を楽しめることが紹介されました。
参加した学生のアンケートからは、能動的に参加できる、コミュニケーションが円滑にできる、初めは緊張感があったが慣れてくると没入感があり、ワクワクするとの回答があったことが報告されました。一方で使い慣れていないので視覚的な負担を軽減する必要がある、ネット環境に依存してしまうことがあるとの回答があり、また、XRCCを大学のオンライン講義で取り入れたら講義自体が楽しくなる、発言しやすいとの回答もあり、この時期はコロナ禍での対面講義の制限がある中で取り組んだのでこういった意見が多くなった背景もあることが紹介されました。

これまでの活動としてオープンキャンパスで高校生や保護者に紹介すると高い関心を得られたこと、新しい空間(細胞空間)の作成を行い、ミクロサイズになった感覚で生物の細胞内部に入り込み、細胞内部の構造を3Dで体感して学べる空間をつくったことが紹介されました。赤木教授から、今後はこれらの取組みの学習効果測定について調査したいと考え、田村准教授と協働して研究を続けていることが報告されました。

生命環境化学科 赤木紀之 教授


次に、田村准教授から、学習効果測定についての取り組みについて発表がありました。学習する時にどういった方法を行えば知識の定着に効果的なのかについて脳波(生体情報)を使って研究を行っていることが紹介されました。学習時の時系列変化を脳波から計測できないかと思い、Zoomと対面の行動・脳活動の差を調べたところ、話し手が変わると脳活動に反応があり、Zoomより対面の方に反応があったことが報告されました。XRCC空間内でアバターとしてグループワークに参加した際の脳波計測の変化や脳波計測者の「発話」と「聴講」、「思考」の関係について引き続き解析していることが紹介されました。
今後は対面やZoom、XRCCなどの参加方法による脳波計測の比較について人数を増やして実施していきたいと述べられました。

情報システム工学科 田村かおり 准教授

(質疑応答)
意見交換では、参加者から「アバターで参加してみて、自由に視点を変えられるという利点もあり非常に興味深く操作を行ったが、最初は操作に手一杯で講話を聴く余裕がなかった」との意見があり、赤木教授から「初めは操作に慣れるまでに時間がかかるので、その辺は学生も訓練が必要」と回答があり、また、「ZoomやTeamsとの違いはアバターで参加すると、一度にディスカッションができるのでグループワークなどに適している」と補足がありました。参加者から、「対面授業では得られないメリットは何か」との質問があり、田村准教授から「学生がアバターを作ると現実とは違う姿になっていることがあり、対面で授業に参加することに心理的に負担がある学生にとっては参加しやすいのではないかと考えている」と回答がありました。赤木教授から「身体的や精神的に対面での参加が難しい学生にもボーダレスで学ぶ空間が創れるようにしていきたい」と述べられました。

最後に、前田副学長(教育開発推進機構長)から、赤木教授と田村准教授に謝辞が述べられ、「メタバースを活用するのに適した授業はどんな授業だろうかと考えた時に、学部学科を超えて分野横断で課題解決などを行う授業などで活用できるのではと考えた。また、本取り組みは教育開発推進機構の特別予算で実施しているので、他の先生方も新しい教育手法に取り組んでみたいという方がいたらぜひ挑戦して知見を共有してほしい」と述べられました。

教育開発推進機構長(副学長) 前田 洋 教授

(アンケートから)
実施後のアンケートでは、「講演内容も興味深く聞かせていただき、その後に参加者が自ら操作しながら、あちらこちらで活発な議論があり、様々な意見に触れられとても参考になった」、「アバターでの聴講はZoomなどの講演より自然な印象を受けた。また、自由に視点を変えられることによる利点も多く感じた。注目したい部分に移動し視点を切り替えながら聴講することにより、Zoomなどのオンライン講演を聴講するときよりも能動的に聴講しているという感覚が増していたと思う」、「脳波などの客観的なデータを用いて主観とは違う方法で評価できれば、より適切な教育方法を探求できると思った」とのコメントがありました。
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