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2022.12.16

第27回FD Café「主体性を導く目標設定、方略設定、動機づけ」を開催しました (12/9)

12月9日(金)第27回FD Café「主体性を導く目標設定、方略設定、動機づけ」を本部棟3F FITLinkプレゼンテーションコートにて開催いたしました。今回のFD Caféは、土屋麻衣子教授から、学生が学習に臨む際の意識に変化をもたらすことを意図して「自己調整・動機づけを高める指導の要素」を導入した授業実践について話題提供を頂き、参加者で意見交換を行いました。対面とオンラインで開催し、教員20名と職員26名の計46名が参加しました。
 
初めに、土屋教授から授業の実践事例を元に本学の学生の主体性育成について参加者で意見交換を行いたいと述べられ、学生の目標設定と動機づけの関係、自己調整学習と1stステップですべきこと、「自己調整・動機づけを高める指導の要素」を入れた授業実践についての流れで進められました。
土屋教授が学生の目標設定と動機づけを調査する中で、第1回目の授業で学生にこの授業における目標を設定させ、授業終了時に自分が掲げた目標へのやる気を1から10の数字で答えてもらった事例の紹介があり、学生の回答をグループで予測するワークを行いました。グループでの意見の後に土屋教授から実際の授業では、1回目の授業ではやる気度が低かったが、2回目の授業では目標の重要さや具体的な方法等を説明したところ、やる気度が明らかに向上した結果が出たことが報告されました。このことから正しく目標設定を行うことの大切さと、継続させるためには適切なフィードバックが必要であることが報告されました。
 
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次に、自己調整学習サイクル(3段階)と1stステップですべきことについて説明がありました。自己調整学習とは約10年前から提案されている教育学の理論体系で、日本では2020年度から順次新学習指導要領に含まれていること、主体性の可視化手段として自己調整学習が研究されていることが紹介されました。その中で、一般的に自己調整学習では目標、行動、振り返りのプロセスと言われているが、それをより具体的にすると、予見段階、遂行段階、省察段階となり、それぞれの段階にはさらに具体的な項目があると説明がありました。
また、能動的な姿勢が身に着くためには1stステップでの取り組みが90%を占め、目標設定を具体的にし、さらに段階を設け、いつまでに何をするかを数値化し、特に方略や方法をいかに設定するかが大切であり、自分でイメージトレーニングする(通学中に単語を覚えるなど)が効果的であり、結果的に1stステップができると省察段階が生きてくることが説明されました。
自己調整・動機づけを高める指導の要素として、安心感を持って学べる教室の雰囲気づくりが大切であること、学習者が興味を持ちそうな科目に関する話題の提供を行うこと、挑戦したくなるようにタスクを提示すること、振り返りのサポートや目標達成感の確認を行うこと、失敗の理由を能力に帰属させないフィードバックをすることが挙げられました。
 
土屋教授が取組んでいることとして各期初回の授業では10分くらい前に教室に行き、いきなり授業を始めるのではなく学生に声をかけ、質問や相談がしやすい環境づくりを大切にしていることが紹介されました。その後、参加している教職員で各自取り組んでいることについて意見交換が行われました。
意見交換では、教員と学生のコミュニケーションづくりが大切であること、ネガティブな感情を持っている学生に肯定感を育むような指導を行っていること、努力して目標を達成した先輩の事例を紹介して動機づけにつなげていること、時事ネタから専門の内容に入っていく授業を行っていることなどの事例が紹介されました。
土屋教授から、自己調整がうまくできる学生とそうでない学生の違いは目標に向かう際の楽しみをどこに置くかであり、結果しか見ないのではなくプロセスに喜びを感じることが大切であることが述べられました。教育学の中で学生が能動的に授業に参加する機会を設ける研究として、課題を出すときに選択肢を与えるという取り組みが紹介されました。ここでは取り組む課題にオプション(3つほど)を設け、難易度に合わせて評価を設定、学生に自分で選択させるということも行われていることが紹介されました。一見易しそうに見えるかもしれませんが、学びを学生自身に決めさせるということは実は学生にとっては厳しいことであり、選ばせることは学習の責任が学生にあることが報告されました。
土屋教授の授業の中で上述の要素を入れた授業と入れていない授業でアンケート調査(モデリング、サポート・フィードバック・グループでの教え合い、振り返り、動機づけ)で比較してみたところ要素を取り入れた授業の方が明らかな優位性があった結果が報告されました。調査対象の各授業における学生の学力も動機づけもほぼ同じ状況であったため、やはり学生には教員の取り組み姿勢が伝わることを実感したと感想が述べられ、サンテグジュペリの言葉A goal without a plan is a just a wishを引用され、wishで終わらないようにゴールを目指しましょうと締めくくられました。
 
最後に、前田教授(情報工学部長)から、土屋教授と参加者への謝辞が述べられ、自身の授業の方法と共通点があったので取り組んできたことへの納得感があったと感想がありました。さらに、本日の研修を受けて、今後の本学の教育の方向性として、専門の内容に加え正課内外を含めて本学の学生にどうなってほしいのか検討し、そこに向かうためのカリキュラム、教育の手法の検討に全学的に取り組む時期に来ているのではないか、その時に自己調整学習で学生が学んでいく学習者本位の教育を進めていかなければいけないとコメントがありました。
質疑応答では、「動機づけが単位取得率をあげるのにどうつながるのか?」との質問があり、土屋教授から、「目的をどこに置くのかが大切であり、自分の場合は担当科目が英語で、英語は生涯にわたり学び続けてほしいと思っている。単位取得が目標になるのではなく意欲を持って内容の取得を目指してほしいので動機づけには力を注いでいる。」と回答がありました。
実施後のアンケートでは、「学生のモチベーションを15週の最後まで維持するには、講義の折々に学修目標や目的を再確認させるプロセスを織り込むことが有効であることがよく分かりました。」、「自己調整型学習のポイントの一つは目標設定にあると思います。目標設定のレベルには、各科目内での目標設定や半期・年度ごと、大学4年間での目標設定など様々なレベルがあると思いますので、各レベルの目標設定のポイントについて考えるきっかけとなりました。また、学生の様々なレベルでの目標設定には各々の経験や社会に対する理解が必要だと思うので、トライと失敗体験をポジティブに捉える環境づくりが大事だと感じました。」とのコメントがありました。
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