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2022.03.31

第23回FD Café「データで見る福工大生のリアル」を開催しました (3/9)

大学には、教育に関わる客観的なデータ分析に基づき、教育活動・学修活動の効果検証を行い、教育改善を推進していく教学IRが求められています。今回のCaféでは、学内に蓄積されている学生の学修に関する様々なデータを活用し、本学学生の学びの姿を明らかにする事例を共有し、どのような改善を行うことができるかについて考えるとともに、今後のデータ活用の可能性を探りました。研修はハイフレックス型で行われ、学長をはじめ、教員29名と職員34名の計64名の参加がありました。

まず開会にあたって、下村学長より、本研修から多くの知見が得られることを期待しているとのご挨拶がありました。続いて、倪教務部長(FD推進機構副機構長、全学教育開発WG長)より「IRと教育改善及び本学のIR体制」と題し、IRとは何かについての説明の他、教学IRは教学マネジメントを支える基盤の一つであること、教学IRによる教育成果・学修成果の可視化の重要性、本学のアセスメントプランの取組との関連、アセスメントの項目・指標として整理された20項目の「教学関連データ」について現在取り組んでいる可視化方策等について説明がありました。また、こうした情勢を背景に本学のIR体制の現状を振り返り、本学は「分散型IR」としてIR活動が実施されているとした上で、IRを有効に機能させるためには、入学から卒業までの様々なデータを包括的に収集・分析し、学生募集や教学改革・改善へと結びつけるエンロールマネジメントの視点で課題があること、また、本学の学生調査が、部局ごとに実施・分析されており、全体としての実施状況の把握や各データの関係性等の分析が十分に行われていないことから、IR全体を統括するハブ機能が必要であるという課題の提起がありました。
  • 下村学長

  • 倪教務部長

次に、FD推進室および教務課より、学生の学修に関するデータ活用に関する話題提供が行われました。

話題提供①では、FD推進室から「大学IRコンソーシアム学生調査および卒業生調査予備分析からみる福工大生の現状」と題し、本学が2018年度から実施しているIRコンソーシアム学生調査の概要や、AL型授業全学展開の成果可視化における活用実績について説明がありました。また、入学時の状況、日常の生活時間、人々(他の学生、教員)との関わり、授業に臨む姿勢や態度、授業での経験と学びについて、他学2校との相互比較を行った結果について説明があり、この中で本学の学生像について、「遅刻や欠席をしない真面目な学生生活を送っているが、期待されている大学生にふさわしい主体的な学びやそれを支える自己調整はできていない。まだまだ高校生の延長線上から進み出ていない」として、「教員との親和性の低さやコミュニケーションの機会の不足」「授業では受け身の姿勢が目立ち、授業の中で高次の主体性を発揮する機会は少ない」、「授業では授けられる知識の修得に懸命で、問題意識を有しそれらを応用、統合した課題解決活動には至っていない」という分析結果が示されました。また、全学DP見直しに向け、本学卒業生の学修成果の検証を目的とし、外部に託して実施した大学IRコンソーシアム卒業生調査の分析結果の報告がありました。本分析は「在学中に身についた能力」と「社会で求められる能力」について因子分析および4象限分析の手法を用いて行われたもので、学部ごとに大きな違いは見られないが、「専門分野や学科の知識」、「数理的な能力」について、工学部と情報工学部はDPとして優先度の高い第1象限に位置しているが、社会環境学部は第1象限になく、優先度が下がること、全体として「数理専門分析能力」因子、「コミュニケーション」因子は優先度の高い第1象限に位置している一方で、主にDPのA(多面的理解)・B(社会的責任)が対応する「多様性・社会問題理解」因子が優先度の下がる第3象限に位置しており、SDGSsやESDの観点も踏まえ、第3象限に位置する能力・知識をDPとしてどのように位置づけるかは今後の検討課題であること、これらの結果を受け、今後の大学DPの見直しに関する議論の具体的な進め方について検討を行っていくとの説明がありました。また最後に、教員および職員に向け、積極的なデータ活用や分析結果を「個別最適」な指導・支援に活かして頂きたいとのメッセージが送られました。また、これに続いて、設問項目への要望や、在学中身に付いたと感じるが、社会で求められると感じられない傾向にある第4象限に位置する項目の背景(カリキュラムに起因するのか、あるいは就職先に起因するのか)などについて、質疑応答・意見交換が行われました。
話題提供②では、教務課から「IRデータを活用した脱落防止策の試み」と題し、2017年度入学生の追跡調査進捗報告や2021年度学生ケアについて、また今後の方向性について報告がありました。まず、2017年度入学生の追跡調査については、「いつ、どの学年で、どのような理由/科目で、脱落する傾向が強いのか?」を明らかにすることを目的に、学籍異動、成績(GPA)、面談結果(学生プロファイル)のデータを活用して4年間の追跡調査を実施・分析した結果、脱落傾向は1年目から表れ、2年目、3年目に顕在化することから、早めのケアが必要であること、脱落要因の70%は「学業不振、大学生活不適応、興味がわかない」であること、脱落との相関性が強い科目(センサー科目)の割り出し、基礎学力とともにアカデミックスキルの修得(入学前教育、初年次教育)の必要性が示されたとの報告がありました。またこの分析結果から、ケアの課題として、①正課・正課外の連動、②面談の質向上、③大学の学びへのスムーズな移行が挙げられ、一連の繋がりを持った教職協働の学生支援によるエンロールマネジメントの実現が提起されました。次に、2021年度学生ケアについて、「早期ケアの開始」、「継続的サポート」、「教員・保護者との連動」「面談力向上」等を柱として実施・分析した結果、つまずき原因は「大学生活不適応」で多欠席となり、前期終了時「単位不足」で学業不振が明らかになり、退学へ至るという流れにあることの説明があり、2017年度入学生の追跡調査と共通する上記①~③の課題が改めて提示されました。また報告の最後に、正課・正課外に関連するデータを統合して分析するなど新しい切り口でデータを活用していくことや、成績下位層に焦点を当てた脱落防止を目的とする学生ケアを継続しつつ、さらに中・上位層を引き上げる取組みを行うことにより、個別最適な学習支援を展開していくことなど、今後のデータ活用による学生サポートの方向性が示されました。続いて、留年して復帰していく過程において、何が効果的であるのかという追跡調査や学習習慣が確立できていない要因分析も有効であることや、高校生の時の学習習慣と大学生になってからの学習習慣の関連等について質疑応答・意見交換がありました。この中で、学習習慣に関して、学習習慣がついているかと効果的な学習ができているかというのは分けて考えるのがよく、これは教育学における様々なデータで示されていること、また学習方法を学ばないまま大学生になっているケースも多いと考えられることから、こうした観点で学習習慣の深堀をする必要があること、また、本学の学生は教員との関わりが比較的少ないという話題提供①の報告とも関連して、教員との関係性構築が学力向上や学習継続などにどう作用するかという観点で見ていくことについても意見がありました。

最後に倪教務部長より閉会の挨拶があり、データから見えてきたものや今後のデータ活用への期待が述べられ、閉会となりました。また参加者アンケートでは、学生調査に関して、本学学生の回答率の低さ、学生の主体性を発揮させるための他大学の工夫、自己評価が高すぎる傾向になる学生の学力および留年・大学との関係について、自己評価の修正により修学態度や学びの姿勢を改善するような取り組みの可能性を検証すべきとの意見、データを活用した教育改善の重要性を認識し、今回のような研修会をシリーズ化して実施してほしいとの要望など、教学IRへの必要性や期待が感じられる多くの回答が寄せられました。

※当日の動画および配布資料はFIT Replay(学内専用)をご覧ください。
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