NEWS新着情報

トピックス

2023.11.16

第32回FD Café「DX推進・デジタル人材育成の政策動向及び企業DX事例について」を開催しました (10/31)

10月31日(火)第32回FD Café「DX推進・デジタル人材育成の政策動向及び企業DX事例について」をE棟3F FDセミナー室にて開催いたしました。
今回のFD Caféでは、経済産業省九州経済産業局から春口浩子氏をお招きし、大学や学部レベルなど組織的に教育プログラムを今後展開するために必要な教育界・産業界の動向に関する情報共有、教育DXによる新たな教育の価値創造の促進を目的に開催しました。対面とオンラインで開催し、教員32名 職員25名 他大学から12名の計69名が参加しました。
講演に先立ち、藤岡情報工学部長から、本日は経済産業省におけるAIデータサイエンスの人材育成に関する政策、九州内での産業界におけるAIデータサイエンスに関する現状と課題、大学教育への提言などをお話し頂くことが紹介されました。また、講師の春口様は九州経済産業局に入職された後、地域企業の海外展開、SDGsの経営等の推進、人事会計等のバックオフィス業務などをご担当されて、2022年4月から現職に着任され、地域企業のデジタル化推進に向けてDXコミュニティ形成支援、デジタル人材育成、サイバーセキュリティ対策の推進などに取り組んでおられることが紹介されました。

情報工学部長 藤岡寛之教授

春口様から、本日の講演では社会的な背景を踏まえた現状認識、DX推進に向けた政策、データA I活用事例の紹介という流れで進めることが説明されました。まず、九州全体の経済状況について紹介があり、域内の総生産GDPは全国で549兆円となり、九州が45.9兆円で約1割であること、その産業の内訳として製造業が2割弱、卸小売や不動産が1割、保健衛生社会が1割といった状況が説明されました(2020年度工業統計より)。そのうち特徴として、製造業の内訳では、自動車関係や食料品、電子デバイス、半導体などが全国と比較してかなり高い比率であることが紹介されました。こういった社会的背景において、国内の人口減少が進む中で労働生産性を考えると、生産性高く働きそれを賃金にも結びつけ、次の経済の循環に回していくことが経済産業省としても課題であることが述べられました。課題の解決のためには、社会の変化に対応し、新しい課題へ対応できる力を身に付けるために学び直しが非常に大切になると考えていること、生産性を上げていく切り札の一つとしてデジタルの活用を検討していることが述べられました。

経済産業省九州経済産業局 春口浩子氏

企業におけるDX推進に関する意識調査(帝国データバンク調査)では、DXの言葉の意味を理解し、取り組んでいる企業は15.5%であり、従業員数が多い企業ほどDXへの取り組みが積極的な傾向があること、DXに取り組む上での課題として約半数の企業で人材やスキル・ノウハウの不足、また対応する時間・費用といった社内リソースの課題が存在することが述べられました。その中で、リスキリングに取り組んでいる企業は48.1%で、オンライン会議システムやBIツールなどの新しいデジタルツールなどの学習が進んでいることが紹介されました。一方で、大学での学習や学位の取得を推奨することは、1.9%となっている現状が示されました。また、日本のデジタル投資の大半は既存システムの維持にあてられており、他国と比べて、デジタル技術を活用したビジネス変革による生産性向上を達成できていないことが報告されました。
そういった現状から、経済産業省では産業全体の競争力強化や社会の課題解決を図るために企業のDX化とデジタル人材育成を両輪で推進していくことが重要であると考え、中堅、中小企業向けに「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き2.0を作成し、DXの進め方や成功のためのポイントを紹介し、企業のDXを推進している事例が説明されました。
デジタル人材育成に関しては、デジタル田園都市国家構想基本計画の中で位置づけており、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を」目指すことを基本的な考え方とし、デジタル人材の確保と育成に重点をおいて、2026年度末までにデジタル推進人材230万人の育成を目指すことを掲げていることが紹介されました。この実現のために、デジタルスキル標準(DSS)の策定、デジタル人材育成プラットフォームを構築し、企業内人材や個人のリスキリングを推進する、オンライン教育サイトを作成し、受講を促進していることが紹介されました。このマナビDXオンライン教育サイトは、三つの層になっており、一層がオンライン教育サイト、二層目がケーススタディ教育プログラム、三層目が地域企業協同プログラムという実践的なメニューで構成されていること、デジタル人材の求めるスキルを自ら学べるように、民間・大学等が提供する様々な学習コンテンツや講座を分野・レベル(スキル標準)に区分し、ポータルサイトに提示し、2023年10月現在で526講座開講し、社会人や学生が受講をしていることが報告されました。
講演後の質疑応答では、「学校教育や大学教育の中にDXの仕組みを導入する際のポイントなどのアドバイスがあれば教えてほしい。」との質問があり、春口様から、「マナビDXなどの教材は一部の大学でカリキュラムに取り入れている例があり、オンラインでの事前学習と企業様との協働では実態に近い課題をテーマに設定しているので、より具体的な内容が学べると考える。すでに大学で実施しているPBLと似ている部分もあると思うので、その中での接点を探すとプログラム開発の参考になるかもしれない。」との回答がありました。また、「大学のDX教育において、どういった人材育成を期待しているのか、求めていることはあるか。」との質問に、春口様から「企業様との話では、企業内での課題を見つけ行動できる人材を求めているとの声を多く聞くので、そういった点に加えてこれからはDXを活用できる人材が求められていると考えている。また、大学は関係者以外からはどこにコンタクトしていいか分からないという声を聞くので、もう少し気軽に学びに参加できるような環境が整ったらよいのではないか。」とのアドバイスがありました。
 最後に、副学長の前田教育開発推進機構長から、春口様への謝辞が述べられ、大学に求められているDX教育については、学生が卒業後に社会で生産性を上げていくことができる人材となるために、専門教育と教養教育とDXを掛け合わせた教育を実施していきたいと述べられました。

 実施後のアンケートでは、「具体的な企業の取り組みについて、知らなかったDX事例が多かった。このような事例は、大学の中にいるとわからないので非常に勉強になった。また、もっとアンテナをはる必要があると感じた。」、「教育に落とし込むのであれば、スペシャリストたるデジタル人材はもとより、そうではないレベルの人材も求められていることと、その層に求められる相応のレベルがどの程度であるかということを明確にできると、学ぶ側の意識を設定しやすいと思った。」とのコメントがありました。

副学長 前田 洋 教育開発推進機構長

前のページに戻る